通《とお》して、磁器《じき》の肌《はだ》のように澄《す》んだおせんの顔《かお》を、じっと見詰《みつ》めた。
「大《たい》そう早《はや》いの」
「はい。少《すこ》しばかり思《おも》い余《あま》ったことがござんして、お智恵《ちえ》を拝借《はいしゃく》に伺《うかが》いました」
「智恵《ちえ》を貸《か》せとな。はッはッは。これは面白《おもしろ》い。智恵《ちえ》はわたしよりお前《まえ》の方《ほう》が多分《たぶん》に持合《もちあわ》せているはずだがの」
「まァお師匠《ししょう》さん」
「いや、それァ冗談《じょうだん》だが、いったいどんなことが持上《もちあが》ったといいなさるんだ」
「あのう、いつもお話《はな》しいたします兄《あに》が、ゆうべひょっこり、帰《かえ》って来《き》たのでござんす」
「なに、兄《にい》さんが帰《かえ》って来《き》たと」
「はい」
「よく聞《き》くお前《まえ》の話《はなし》では、千|吉《きち》とやらいう兄《にい》さんは、まる三|年《ねん》も行方《ゆくえ》知《し》れずになっていたとか。――それがまた、どうして急《きゅう》に。――」
「面目次第《めんぼくしだい》もござんせぬが、兄《にい》さんは、お宝《たから》が欲《ほ》しいばっかりに、帰《かえ》って来《き》たのだと、自分《じぶん》の口《くち》からいってでござんす」
「金《かね》が欲《ほ》しいとの。したがまさか、お前《まえ》を分限者《ぶげんじゃ》だとは思《おも》うまいがの」
「兄《にい》さんは、あたしを囮《おとり》にして、よその若旦那《わかだんな》から、お金《かね》をお借《か》り申《もう》したのでござんす」
「ほう、何《な》んとして借《か》りた」
「いやがるあたしに文《ふみ》を書《か》かせ、その文《ふみ》を、二十五|両《りょう》に、買《か》っておもらい申《もう》すのだと、引《ひ》ッたくるようにして、どこぞへ消《き》え失《う》せましたが、そのお人《ひと》は誰《だれ》あろう、通油町《とおりあぶらちょう》の、橘屋《たちばなや》の徳太郎《とくたろう》さんという、虫《むし》ずが走《はし》るくらい、好《す》かないお方《かた》でござんす」
「そんなら千|吉《きち》さんは、橘屋《たちばなや》の徳《とく》さんから、その金《かね》を借《か》りて。――」
「はい。今頃《いまごろ》はおおかた、どこぞお大名屋敷《だいみょうやしき》のお厩《
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