ギラ燃えていた。その空の奥に、あなたの顔の輪廓《りんかく》が、ぼおっと浮んだような気がしました。

 あなたに逢いたい、逢いたいと思っていた。そうしたら、ワイキキ・ビイチに行く途中、凱旋門《がいせんもん》のところで、あなたと内田さん達の一行に、ぱったり逢いました。ぼく達の自動車は、助手席の処《ところ》にぼく、うしろに三番の沢村さん、二番の虎さんなんかが乗っていた。あなたはその日、朝からずうっと萎《しお》れどおしのようでした。ただ、内田さんは、たいへん元気で、あなた達がつけたぼくの綽名《あだな》を呼び「ぼんぼん、アイスクリイムあげよう」と片手に、容器を捧《ささ》げてとんで来ました。ちょうど、車が動きだしたところだったので、はにかみながら腕《うで》を伸《の》ばした。ぼくには届かず、うしろの沢村さんが、ひッたくッてしまった。そして、なにか猥褻《わいせつ》なことを内田さんに言い、自分もすこし照れた様子で、わざと「うまい。うまい」と内田さんのほうに、みせびらかしながら、虎さんと食ってしまいました。虎さんも助平な事を言い、豪傑《ごうけつ》笑いしてから食っていた。
 ぼくは甚《はなは》だ、憤慨《ふん
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