八

 横浜を出てから一週間も経《た》った頃《ころ》、朝の練習が済むと、B甲板《かんぱん》に、全員集合を命ぜられました。役員のひとりで、豪放磊落《ごうほうらいらく》なG博士が肩幅《かたはば》の広い身体《からだ》をゆすりあげ、設けの席につくと、みんなをずっと見廻《みまわ》したのち、
「諸君。ぼくはこんなことを、日本選手でもあり、立派な紳士《しんし》、淑女《しゅくじょ》でもある皆《みな》さんに、お話するのは、じつに残念であるが、止《や》むを得ん。とにかく、本日|只今《ただいま》から、男子と女子の交際は、絶対にこれを禁止する。
 遊ぶのは勿論《もちろん》ならんし、話をしても不可《いか》ん。今後、この規則を破るものがあったら、発見次第それぞれの所属チイムの責任者によって、処分して貰《もら》う。尚《なお》、その程度によっては、ホノルルなり、サンフランシスコなりに、船が着いたら、下船させてしまうぞ。スポオツマンとしての資格の欠けるものに、日本は選手として、出場して貰いたくないのだ」
 日頃、太ッ腹な氏としては、珍《めずら》しく、話すのも汚《けが》らわしいといった激越《げきえつ》ぶりでした
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