Aくすんだ緑色の島々、玩具《おもちゃ》のような白帆《しらほ》、伝馬船《てんません》、久し振《ぶ》りにみる故国日本の姿は綺麗《きれい》だった。鴎《かもめ》とびかう燈台《とうだい》のあたりを抜《ぬ》けて、船が岸壁《がんぺき》に向おうとすると、すでに、満艦飾《まんかんしょく》をほどこした歓迎船《かんげいせん》が、数隻《すうせき》出迎えに来てくれていました。
埠頭《バンド》を埋めた黒山の群衆のなかから、日の丸の旗がちらちら見えるのに、負けてきた、という感慨《かんがい》が、今更《いまさら》のように口惜《くや》しく、済まないなアと込《こ》みあげて来ました。
もはやどやどやと上がりこんで来た連中で、甲板《かんぱん》は一杯《いっぱい》になり身動きもできません。新聞記者さんが一人、二人、ぼくのような者にまでインタアビュウに来てくれるのでした。
しかし色んな事で上気してしまっているぼくには、話といっても別に出来ませんでした。が、その翌日の地方版をみると勇ましく片手を挙げたぼくの写真の下に、※[#二重かっこ開く]坂本君は語る※[#二重かっこ閉じ]として次の様な記事が出ていました。
※[#二重かっこ開く
前へ
次へ
全188ページ中177ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 英光 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング