オゅんかん》、ア、しまった、と思った時にはすでに遅《おそ》く、その隙《すき》に立ち直った沢村さんが、「貴様やる気だな」と叫《さけ》びざま、ぼくを突《つ》きとばすと、直《す》ぐのしかかって来て、ぼくの頸《くび》を絞《し》めつけました。
 そのとき松山さんが部屋から出て来て、この有様をみるなり、「おい、沢村よせよ、大坂《ダイハン》はだいぶ酔っているぜ」と止めてくれましたが、沢村さんは一度手をはなしたかとおもうと、今度はなんともいえぬ意地悪い眼付で、まじまじぼくを見詰《みつ》めているうち、不意に、平手で、力|一杯《いっぱい》、ぼくの横ッ面《つら》を張った。ぼくはことさら撲《なぐ》られるのも感じないほど酔っている風に装《よそお》い、唇《くちびる》を開けてフラフラして見せているのに、沢村さんは、続けて、ぼくの右頬《みぎほお》から左頬ヘと、びんたを喰《く》わせ、松山さんを顧《かえり》みてはニヤニヤ笑い、「こら、大坂《ダイハン》、これでもか。これでもか」 といくつも撲った。

     二十七

 そうして、横浜に着きました。
 朝靄《あさもや》を、微風《びふう》が吹《ふ》いて、さざら波のたった海面
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