にやられては堪《たま》らない。ぼくが会って、あなたのことも、明瞭《めいりょう》に、あやまらせて置きます」
 ぼくはこんなにテキパキあなたに話ができる川北氏が羨《うらやま》しかった。ぼくには、悔恨《かいこん》と憧憬《どうけい》しかない。しかし、この人には理性と実行力があるのだと、尊敬する気持で、ぼくは、ネルチンスキイを捜す、川北氏のあとについて行きました。
 折よくプウルの傍の手摺によりかかり、海に唾を吐きちらしているネルチンスキイをみつけると、川北氏は傍に近づき巧《たく》みな英語で話しかけます。ぼくは初めから川北氏に無視された形でしたが、ここでも語学の点で、尚更ひっこんでいなくてはならず、それでもなにかの役に立てばと独りで興奮して、二人の会話を傍観《ぼうかん》していました。
 ぼくにはよく解らないながら、川北氏の一言一句はネルチンスキイの肺腑《はいふ》に染《し》み渡《わた》るとみえ、彼はいかにも恐縮《きょうしゅく》した様子で、「I'm sorry.」を繰返《くりかえ》しては頷《うなず》いていました。タイなしのカッタアシャツに灰色の上衣をひっかけた五尺そこそこ無髯《むぜん》の川北氏が、六
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