け去ってしまいました。
さて、ぼくは、あなたの傍《そば》のデッキ・チェアに坐《すわ》り直してはみましたが、やはり、烈《はげ》しい羞恥《しゅうち》にいじかんだような、堅《かた》いあなたの容子《ようす》をみていると、ぼくも同様あがってしまい、その癖《くせ》、意地悪いうちの連中がやってきて、なにか言うなら言え、とそのときの糞度胸《くそどきょう》はきめていたのですが、愈々《いよいよ》話をする段になるとなにから話そうかと切りだす術《すべ》をさがして、ぼくは外見落着きを装《よそお》ってはいるものの、頭のなかは火のように燃えていました。
と、自分の靴先《くつさ》きをみるともなく見詰めていたぼくの瞳《ひとみ》に、あなたの脚《あし》が写ってきました。海風が、あなたのスカアトをそよと吹《ふ》く、静かな一瞬です。短かい靴下《ソックス》を穿《は》いていたあなたの脚に生毛《うぶげ》がいっぱいに生えているのがみえました。そのときほど、毛の生えた脚をしているあなたが厭《いや》らしく見えたことはありません。
男は女が自分に愛されようと身も心も投げだしてくると、隙《すき》だらけになった女のあらが丸見えになり堪《た
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