いこん》が、彼の心身を蝕《むし》ばんでいるさまがありありと感ぜられ、外では歓呼の声や旗の波のどよめきが潮《うしお》のように響《ひび》いてくるままに、なにかスポオツマンの悲哀《ひあい》、身に染《し》みるものがあって、ぼくも心がむなしかったのです。
浪《なみ》に明け浪に暮《く》れる日々。それから毎日、海をみて暮《くら》していました。誰《だれ》やらの抒情詩《じょじょうし》ではありませんが、ただ青く遠きあたりは、たとうれば、古き思い出。舷側《げんそく》に、しろく泡《あわ》だっては消えて行く水沫《うたかた》は、またきょうの日のわれの心か、と少年の日の甘ったるい感傷に溺《おぼ》れこんでもみるのでした。阿呆《あほう》なぼくは時折、あなたのことを思い出しては、痛く胸を噛《か》む苦さと快さを愉《たの》しんでいました。
アメリカを発《た》ってから五日目。暖かい陽光をいっぱいに浴びた甲板のデッキ・チェアに腰《こし》を降ろして、蒼々《あおあお》と凪《な》いだ太平洋をみるともなく眺《なが》めていますと、どやどやと下のケビンから十人ばかりの女子選手達があがって来ました。
内田さんや中村|嬢《じょう》のなかに
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