いこん》が、彼の心身を蝕《むし》ばんでいるさまがありありと感ぜられ、外では歓呼の声や旗の波のどよめきが潮《うしお》のように響《ひび》いてくるままに、なにかスポオツマンの悲哀《ひあい》、身に染《し》みるものがあって、ぼくも心がむなしかったのです。
浪《なみ》に明け浪に暮《く》れる日々。それから毎日、海をみて暮《くら》していました。誰《だれ》やらの抒情詩《じょじょうし》ではありませんが、ただ青く遠きあたりは、たとうれば、古き思い出。舷側《げんそく》に、しろく泡《あわ》だっては消えて行く水沫《うたかた》は、またきょうの日のわれの心か、と少年の日の甘ったるい感傷に溺《おぼ》れこんでもみるのでした。阿呆《あほう》なぼくは時折、あなたのことを思い出しては、痛く胸を噛《か》む苦さと快さを愉《たの》しんでいました。
アメリカを発《た》ってから五日目。暖かい陽光をいっぱいに浴びた甲板のデッキ・チェアに腰《こし》を降ろして、蒼々《あおあお》と凪《な》いだ太平洋をみるともなく眺《なが》めていますと、どやどやと下のケビンから十人ばかりの女子選手達があがって来ました。
内田さんや中村|嬢《じょう》のなかに交ってあなたの姿もみえたとき、ぼくは心が定らないまま逃《に》げだしたい衝動《しょうどう》にかられました。しかし女のひとが好きで且《か》つおっちょこちょいのぼくは、あなた達から好意を持たれているのを意識しているだけ、なにか気の利《き》いた文句を一言聞かせたく、その為《ため》だけでも浮々《うきうき》と皆《みんな》を迎《むか》えるのでした。みんなはお喋《しゃべ》りな小鳥のようにペちゃくちゃ囀《さえず》りながら、附近《ふきん》のデッキ・チェアに群がりましたが、ぼくの顔をみるや、急に内田さんから始まって、ひそひそ話になり、一度にぱっと飛びたって、一瞬《いっしゅん》の間に全部いなくなってしまいました。あとにあなたともう一人、円盤《えんばん》の石見嬢が残っていましたが、石見さんもみんなの俄《にわ》かに席から立ち去って了《しま》ったのに驚《おどろ》くと、きょろきょろ辺《あた》りを見廻《みまわ》して、初めてあなたとぼくに気づくと、こちらが照れてしまうほど真《ま》ッ赧《か》になり、大きな身体《からだ》をもじもじさせ、スカアトの襞《ひだ》を直したりして体裁《ていさい》を繕《つくろ》ってから、大急ぎで駆《か》
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