からからかったり、馬鹿にしたわらい声を投げつけたりしましたが、キーシュはかたく口を結んで、しっかり真正面を向いてふりむきもしませんでした。

  二

 翌日彼は、どこへゆくのか、氷と陸地がつながり合う海の縁《へり》を歩いてゆきました。彼に出会った人は、彼が弓と骨の矢尻《やじり》をつけた沢山の矢を持ち、お父さんが狩に使っていた大きな鎗《やり》を、小さな背中に背負っているのに気がつきました。皆はこの小生意気なふうてい[#「ふうてい」に傍点]を見て笑いました。そして寄るとさわるとキーシュのことばかり話し合いました。こんなことはこれまでにないことです。彼のようなかよわい年で、狩に出かけた者は一人だってありません。まして一人っきりで出てゆくなんて思いもよらないことでした。中には心配そうに首を傾《かし》げたり、可哀《かわい》そうなことが起りはすまいかと、つぶやいたりする人もありました。村の女たちが気の毒そうな目で母親の方を眺めるので、彼女の顔は沈んで悲しそうでした。
「なアに、じきに帰って来るでしょうよ」
 女たちは、キーシュのお母さんに、元気をつけるようにいってくれます。
「勝手にゆかせる方が
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