負けない少年
吉田甲子太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)可愛《かわい》らしい

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(例)えこひいき[#「えこひいき」に傍点]
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  一

 北アメリカ大陸の北はずれ、北極海にのぞんだアラスカのお話です。
 この地方には、エスキモーという人種が氷の原に雪小屋をつくって、住んでいます。
 キーシュは、あるエスキモーの村で、どの雪小屋よりも一番みじめな雪小屋にお母さんと二人っきりで住んでいる可愛《かわい》らしい少年でした。キーシュのお父さんは立派な狩人《かりゅうど》で、村が飢饉《ききん》で困った年に、村人たちのために食物にする肉を取って来ようとして獣とたたかい、とうとう命を落したのです。しかし、そういうことは、もう村人たちにも忘れられてしまって、あとに残ったキーシュとお母さんとは、貧しい暮しをしなければなりませんでした。
 だが、キーシュは今ではもう十三歳になり、お父さんゆずりのがんじょうさと負けん気とを持つようになりました。
 ある日、村の寄合《よりあい》の席で、村の頭《かしら》がもう別に何もいう
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