秋空晴れて
吉田甲子太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)痩《や》せっぽち

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)案外|胆《きも》っ玉《たま》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あっし[#「あっし」に傍点]
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  一

「まったくでござんす、親方。御覧の通りの痩《や》せっぽちじゃござんすが、これで案外|胆《きも》っ玉《たま》はしっかりしてますんで。今まで乗ってました船でも、こいつぐらい上手にマストへのぼる奴はなかったそうでござんす。まるで猿みたいな奴だなんていわれてたくらいで――高いところの仕事にはもって来いの餓鬼《がき》です。どうでしょう、ひとつあっし[#「あっし」に傍点]と一しょにリベット(鋲打《びょううち》)の方へでも、ためしにお使いんなっては頂けねえでしょうか」
 ガラガラ、ガラガラとウィンチ(捲揚機《まきあげき》)の廻転する音、ガンガンと鉄骨を叩く轟音《ごうおん》、タタタタタとリベット(鋲《びょう》)を打ち込む響《ひびき》、それに負けないように、石山|平吉《へいきち》は我にもなく怒鳴るような大声で
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