研堂釣規
石井研堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)勉《つと》むる

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)良|竿《かん》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)職業[#「職業」に傍点]
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 人は、遊ばんが為めに職業に勉《つと》むるに非ず、職業[#「職業」に傍点]に勉めしが為めに遊ぶなり。釣遊《ちょうゆう》に、前後軽重の分別有るを要す。
[#ここから2字下げ]
日曜一日の休暇は、其の前六日間職業に勉めし賞与にして、其の後六日間の予備に非ず。若し、未だ勤苦せざるに、先づ休養を名として釣遊に耽らば、身を誤り家を破るの基《もとい》、酒色の害と何ぞ択ばん。
[#ここで字下げ終わり]

 単に、魚のみを多く獲んことを望むべからず、興趣[#「興趣」に傍点]多きを望むべし。
[#ここから2字下げ]
釣遊の目的は、素《もと》より魚を獲るにあれども、真の目的物は、魚其の物に非ずして、之を釣る興趣《きょうしゅ》にあり。故に、風候水色の好適なる裡に、細緡香餌《さいぴんこうじ》を良|竿《かん》に垂れ、理想の釣法を試むことを得ば、目的こ
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