上に飛んだ。――其処には長い間の軛《くびき》を投げ棄て、そして今は『子供の手に引かれて』ゐる民衆がゐるのだ。それは非常な驚異であつた。
バフオド号と云ふ海上の牢獄での航海の間中、私はロシアで子供の為めにされた仕事について考へた。そしてそれで私の心は支へられ、又暖められた。何と云ふ望みに満ちた未来だつたらう。そのすばらしい新生活への一歩だと云ふ事はどれ程私の心を鼓舞した事であらう。
が、私はロシアにはいつてから、此の社会主義国家では有らゆる努力を自分達の軌道に圧縮してしまふのだと云ふ事を考へないで議論してゐた事が分つた。
ボルシエヴイキが子供や教育について其の全力を尽したのは事実だ。そして又彼等がロシアの子供達の必要品を供給する事に失敗したのも、其の咎《とが》には誰方によりもロシア革命の敵の方に多いと云ふ事も本当だ。干渉と封鎖が、無邪気な子供と、病人との弱い肩の上に重く落ちて来たのだ。しかし、もつといゝ条件の下ででも、ボルシエヰキ国家の官僚政治的フランケンスタインの協約は、共産主義者によつてなされた子供と教育とのための最上の努力を痳痺させ、最善の目論見を破棄することよりほか出来なか
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