それ等の見世物学校は有らゆるものの最上等のものを貰つてゐた。其の他の学校へは残りものが行くのだ。そして此の他の学校と云ふのは大部分の学校なのだ。
そして人々は、此の見世物学校ばかりを訪ねて、そしてそれによつてロシアに於ける子供の生活を判断して、ボルシエヴイキ制度の下にある子供の大衆の境遇に就いては全く何にも知らないで行つて了ふのだ。
聯合国の干渉と封鎖とはロシアの恐しい窮乏の主なる責任を負はなければならない。が、それにしても、子供達の生活に必要なる物は、もつと公平に分けてやる事が出来たのだ。ボルシエヴイキの組織其者が、労働者に対する取扱ひにもさうであつたやうに、子供に対してもやはり差別と不公平とを附き纏《まと》はせるのだ。労働者に対しては、いろいろと違つた定食糧があり、それが公然ときめられて公然と行はれてゐるのだ。
子供達にも、それ程公然ではないが、同じやうな事が行はれてゐる。第一に、見世物学校の組織が、一特権を設ける悪い事なのだ。それは、必然にかこつけや嘘や詐《いつわ》りを其の中に含み、それが又教師の上に其の影響を及ぼす。此の点でも又其の他の点でも、ボルシエヴイキの最善の努力を無駄な石胎にして了《しま》つた。一番悪いのは国内の中央集権だ。官僚政治の複雑な機関だ。
[#地付き](第三次『労働運動』第七号、一九二二年九月一〇日)
底本:「定本 伊藤野枝全集 第四巻 翻訳」學藝書林
2000(平成12)年12月15日初版発行
初出:「労働運動(第三次) 第七号」
1922(大正11)年9月10日
※ルビを新仮名遣いとする扱いは、底本通りにしました。
※「ボルシエヴイキ」と「ボルシエヰキ」の混在は底本の通りにしました。
入力:門田裕志
校正:Juki
2009年6月12日作成
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