に困難であるかの理由である。『どうして私は組み合ひなどに加盟しませう? 私は結婚して家庭を造らうとしてゐるのです。』彼女は幼少からそれを以て最終の天職と見做すことを教へられなかつただらうか。然し彼女は家庭がたとへ工場の如く大きな牢獄でないとしても一層堅固な戸と閂《かんぬき》を有してゐることを学ぶのである。家庭はどんなものでも脱れることが出来ない忠実な番人を持つてゐる。最も悲惨なことは家庭がもはや賃金奴隷から彼女を自由にすることなく、単に彼女の仕事を増加することである。
『労働、賃金、並に人口集積』に関する委員に附托せられた最近の統計によると、ニユーヨルク市の労働者中既婚者は僅《わず》かにその一割に過ぎない。而もかれ等は世界中に於て最も低廉な賃金によつてその労働を継続しなければならないのだ。この恐るべき現象に加ふるに家庭の労役が伴ふのである。かくの如くして家庭の保護と光栄の何ものが残されるのであらう? 実際、結婚した中流の少女でさへ自からの家庭に就て話すことは出来ないのだ、彼女の周囲を作り出すのは男だからだ。夫が獣か愛人かと云ふことは重要ではない。私が証拠立てようと望むのは結婚が婦人に家
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