庭を保証するのは単に夫の恩恵によつてのみだと云ふことだ。そこで彼女は年中夫の家庭で動きまわつてゐる。その中に彼女の人生並に人事に対する見解が彼女の周囲の如く平凡、狭隘、蕪雑になる、よし彼女がグヅでくだらなく、口やかましく、おしやべりで堪へがたく遂に男を家庭から運び出すやうになつても少しも不思議はない。彼女は行きたくも行くことが出来ない。行くべき場所がないからだ。のみならず、大抵の婦人は結婚すると間もなく凡《あら》ゆる能力を全く失ひ、外界に対して絶対に無能なものと化する。彼女の外貌は不注意になり、動作は醜くなり、決断が従属的になり、判断が臆病になり、大抵の男が憎悪侮蔑するやうな荷厄介なものになる。
併し若し結婚がないとしたら、子供はどうして保護されるだらうか? 結局これが尤も重要な理由なのではあるまいか? 何と云ふ虚偽、偽善な言ひぐさだらう! 結婚が子供を保護しても貧乏で家のない子供達が数千人ゐるではないか。結婚が子供を保護しても孤児院と感化院とは充ち溢れてゐるではないか、そして小児虐待防止会は常に『愛する』両親から小さい犠牲者を救ひ出し、かれ等の両親より更に親切な小児保護会の手許に彼
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