て結婚は喜劇以外の何物でもない。ただ輿論の為めにそれに服従してゐる許《ばか》りである。兎《と》に角《かく》或種の結婚は恋愛を土台としてゐることは事実であるし、またその恋愛が結婚してから継続してゐるのもあるのは等しく事実ではあるが、私はそれが結婚とはまつたく関係が無いものであり、又それが為めだと云ふやうなことを主張したくないのである。
それに又恋愛が結婚の結果だと云ふのが既に全然誤つてゐる。極く稀れな場合に夫婦が結婚後初めて恋に落ち入ると云ふ奇蹟的現象を聞くこともあるが、よく/\験《しら》べて見ると、やむを得ない場合に於ける単なる調停妥協だと云ふことが発見せられるだらう。相互間に漸次生じて来る恋愛は自発、熱烈性、恋愛美など云ふものから遙かに遠い、それ等のものが欠けてゐれば結婚は男女両者にとつてみじめなものとならなければならない。
結婚は元来経済的の取り極めであり、保険の契約の如きものである。普通の生命保険の契約と違ふところは、ただそれが一層結合的で精確だと云ふにとどまつてゐる。その払ひ戻しは掛金に比べてお話しにならない程僅少である。保険に這入《はい》る人は一時に沢山払ひ込んでも僅かづ
前へ
次へ
全18ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴールドマン エマ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング