てゐる。大なる宗教的情操は全てに最も近附き易いものであるといふことが一般に信じられてゐる。併しこの位真理でないものは恐らくないであらう。宗教的情操は他の場合にあつて偉なる恋愛によりて深く動かさるるが如き人々の精神にのみ大なる発達を見るのである。故に精神は大なる感情の結合より生ずる時更らに偉大になることは明かである。而して理想的恋愛は愛の力と権利とを拡大するであらう。
現代に於けるが如く恋愛が未だ人生に於ける全ての勢力の中で最も侮蔑せられ、最も粗慢に取扱はれ、最も多く裏切られる時代にあつてはこの思想を充分に理解する人は恐らく少ないであらう。故に恋愛は何時か全く異なる形に於て現はれるであらうといふことは大なる理解を有する人でさへ殆んど思惟することが出来ないのである。人類が一歩一歩自己の道を進んで行くには先づ恋愛とその正道といふことを考へなければならない。何故なら人類はかくしてのみ更らに高き人道《ヒューマニティー》に到達することが出来るのであるといふ説を聞いて大抵の人々は疑惑の念を抱いて頭を振るのである。最高の教育を受けた人でさへダンテの所謂、intelleto d' amore(愛の智識
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