思われたほど、むしろそれには、人間ばなれのした薄気味悪さがあった。
「ねえ時江さん」と滝人は座に着くと、相手を正面に見据えてきりだした。「貴女《あなた》は、なにか私に隠している事があるんじゃないの。現に、あの鬼猪殃々《おにやえもぐら》の原がそうでしょう。雑草でさえ、あんな醜い形になったというのも、もともとは、死んだ人の胸の中から生えたからですわ。サア事によったら、貴女だって胸の中の怖ろしい秘密を、形に現わしているかもしれませんのよ」
「何を云うんですの、お嫂《ねえ》さん。私がどうしてそんな事を」と時江は、激しく首を振ったが、知らぬまに、手が、自分の胸をギュッと握りしめていた。
「そりゃまた、どうしてなんです」と滝人はすかさず、冷静そのもののように問い返した。「私はただ、どうして貴女が高代という女の名を知っているのか、それを聴きたいだけなの」
 すると、そう云われた瞬間だけ、時江には、はっきりとした戦《おのの》きが現われた。しかし、その衝動が、彼女の魂を形もあまさず掠《さら》ってしまって、やがて鈍い目付きになり、それは、眠っている子供のように見えた。滝人は、その様子に残忍な快感でも感じて
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