れていて、きまって抱き寄せようとすると、あの娘の姿は消え失せてしまうのでした。だけど、とうとうこれで、夢から愕然と醒めるようなことはなくなってしまうだろう。いいえ、どんなに私をお嫌いな神様だっても、お前が犯人だ――と、私に指差しはできないでしょうからね。だって、考えてごらんなさい。二本縦に渡した綱を取り去ってしまったら、ぐるぐる回転して、頸《くび》筋に結節ができている屍体を、どうして自殺と考えるでしょう。あの二本の綱――いっこう埒のなさそうな趣向一つにも、じつは千人の神経が罩められているのです。一本の横に張った綱だけでは、とうていあの窪みができるはずはないのだしね。結局戸外で絞殺《しめころ》したものを運び入れて、自殺を装わせたという結論になってしまうのですよ。どこにも地面には、引き摺ったらしい跡はないのだし、あの重い屍体の持ち運びができる人物と云ったら、どうしたって、まず喜惣以上[#「以上」底本のまま、「以外」と思われる]にはないじゃありませんか。それに――ああまったく、私には魔法の力がついているんじゃないかしら。きっと真相を知らない捜査官達は、死後経過時間が因《もと》で、とんでもない
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