《こめかみ》に吹き上げてきて、低く息の詰まったような呻きが口から洩れたが、その息を吸いこんだ胸は、膨らんだまま凍りついてしまい、そのまま筋一つ、滝人の身体の中で動かなくなってしまったのである。それから、二度ばかり、あるいは枯草のざわめきかと思われるような音がした。けれども、滝人の神経は、その微細な相違も聴き分けられるほど鋭くなっていて、それを聴くと、むしろ本能的に、眼が廊下の桟窓に向けられた。もうそこには、大半月の光が薄れ消えていて、わずかに階段よりの一部分だけ、細い縞のように光っている。時やよし――その瞬間滝人は、自分の息に血腥《ちなまぐさ》い臭気を感じた。すると、その衝動が大きな活力であったかのごとく、手足が馴れきった仕事のように動きはじめた。まず、稚市《ちごいち》を階段の中途に裾えて足で圧《おさ》え、隠し持った二本の筒龕燈《つつがんどう》を、いつなんどきでも点火できるよう、両手に握り占めた。そして、試みにその光りを、稚市《ちごいち》の上に落してみると、怯えて※[#「※」は「足+腕のつくり」、149−2]《もが》きだした変形児の上に、はっきりとあの魔の衣裳――高の字が描き出されるの
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