ヘ動機だ……」
 と検事は卓子《テーブル》を叩かんばかりの気配を示したが、その時ふと、竦《すく》んだような影が差した。
 と云うのは、この静寂《しじま》のなかを左手の室《へや》――そこには、扉《ドア》も窓も鎖されていて、なに者もいよう道理のない部屋の方向からして、妙に侘しく、コトリコトリと寒さげな音がひびいてきたからである。
 しかし、智性を鋭くしてみると、そこには心を乱すような、何ものも含まれている気遣いはないのであるから、瞬間に検事は、旧《もと》の顔色を復して続けた。
「ねえ法水君、不幸にして、『|鷹の城《ハビヒツブルグ》』遭難の真相が明らかではない。もし、あの夜海底で八住が艇長を殺し、そうした気配が、日誌の中に記されていたとすれば――だ。なにしろ、八住は盲目《めくら》なんだし、またそれと知って、十七年間機会を狙っていたものと云えば、まずウルリーケをさておいて、ほかに誰があるだろう。あの日誌を破ったのは、てっきりウルリーケだと思うよ。ああ、十七年後……」
 とそこで計らずも検事は、「ニーベルンゲン譚詩《リード》」とこの事件とをつなぐ、第二の暗合を発見した――十七年後。
 すると、ハ
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