ュけん》のように弄《もてあそ》んで、それが薄れ消えるときは、鈍い重たげな音を感ずるのである。
 やがて、海霧《ガス》の騎行に光が失せて、大喇叭《テューバ》のような潮鳴りが、岬の天地を包み去ろうとするとき、そのところどころの裂目を、鹹辛《しおから》い疾風《はやて》が吹き過ぎて行くのだが、その風は氷のように冷たく、海霧はまた人肌のように生ぬるかった。
 そうして岬の一夜――まこと彼ら二人にとれば、その記憶から一生離れ去ることのないと思われるほど、おぞましい、悪夢のような闇が始まったのである。
 その――古風な風見が廻っている岬の一つ家には、痩せてひょろ高い浜草が、漆喰《しっくい》の割目から生え伸びているほどで、屋根は傾き塗料は剥げ、雨樋《あまどい》は壊れ落ちて、蛇腹《じゃばら》や破風は、海燕の巣で一面に覆われていた。
 そうした時の破壊力には、えてして歴史的な、動かしがたい思い出などが結びついているものだが、誰しもその自然の碑文には心を打たれ、また、それらのすべては、傷《いた》ましい荒廃の感銘にほかならないのであった。
 しかし、外見は海荘風のその家も、内部《なか》に入ると、いちじるしく趣
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