如実に示されていた。
そのせいか、大きな花環を抱いているそのすがたにも、どこか一風変った、感激とでも云いたいものがあって、おそらく思慮や才智も、充分具えているに違いないが、同時にまた、痴呆めいた狂的なものも閃《ひらめ》いているのだった。
そうして、以前はその四人が、同じ室戸丸の高級船員だったことが明らかになれば、ぜひにも読者諸君は、それと失明との関係に、大きな鎖の輪を一つ結びつけてしまうに相違ない。
そのおりウルリーケは、静かに列の間を、岬の鼻に向って歩んでいった。
ウルリーケが立ち止まって、波頭の彼方を見やったとき、その顔には、影のような微笑が横切った。それはごく薄い、やっと見えるか見えないぐらいの、薄衣《ヴェール》のようなものだったが、しばし悲しい烙《やき》印の跡を、覆うているかのように見えた。
ウルリーケは、見たところ三十がらみであるが、実際は四十に近かった。
のみならず、その典型的な北欧型《スカンディナヴィアン・タイプ》といい、どうみても彼女は、氷の稜片で作り上げられたような女だった。生え際が抜け上がって眉弓が高く、その下の落ちくぼんだ底には、蒼《あお》い澄んだ泉の
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