ウん、私、あの『|鷹の城《ハビヒツブルグ》』だけは、いつかかならず戻って来ると信じておりましたわ。
 艇内が海水でいっぱいになって、クローリン瓦斯《ガス》が濛々《もうもう》と充々《みちみち》ていても――ええ、そうですわ。あの真黒に汚れた帆が、どうしたって、私には見えずにいないと信じておりましたわ。
 ところが『|鷹の城《ハビヒツブルグ》』の遭難が、私を永達に引き離してしまいました。孤独――いまの私に、それ以外の何ものがございましょう」
 と、ウルリーケは悲しそうにいったが、法水は、彼女の声が終るとそれなり黙りこんでしまった。しかし、頭のなかでは、それまで分離していたいくつかの和声旋律が合して、急に一つの荘厳な全音合奏《コーダ》となりとどろいた。
 そして、その夕《ゆうべ》からはじまった急追を手はじめにして、彼の神経は、あの不思議な三角形――艇長・シュテッヘ大尉・維納《ウイン》の鉄仮面と、この三つを繋ぐ直線の上ではたらきはじめた。
「夫人《おくさん》、いつぞや貴女は、菩提樹《リンデン》の葉と十字形《クロスレット》とで、いったい何を示そうとなさったのですか。そして、貴女が最も懼《おそ》れら
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