sわざ》と、弱々しげな嘆息をして、
「こんなことで、議論をするのは、止めようじゃありませんか。ただ僕は、ジーグフリードが殺されて……しかも、血栓を破って、屍体から血が吹きでてきた……」
 と云いかけたとき思いがけない声が、朝枝から発せられた。それは、彼女の全身に、突然狂気めいた力が漲《みなぎ》ったかのように、その蒼ざめた顔が一筋二筋光ってみえた。
「叔父さま、まったく犬射さんのおっしゃるとおりなんですわ。ジーグフリードは、けっして父さんではございません。これはミーメ([#ここから割り注]ジーグフリードを養育した矮人の刀剣工。ジーグフリードを殺さんとしたが、かえって殺さる[#ここで割り注終わり])なんですわ。ジーグフリードを殺そうとして、殺された……」
「ミーメ……」
 と口誦《くちずさ》んで、法水はその一場の心理劇を、噛みしめるように玩味していたが、やがて、意味ありげな言葉を犬射に云った。
「そうです。まさに、あの殺人鬼の幻想的《ファンタスティック》な遊戯なんですよ。しかし、これに海人《あまの》藻芥《もくず》(犬射の雅号)という署名はないにしても、いずれは、誰かの雅号となって、現われず
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