オょうか。それとも、地上の出来事なんでしょうかね」
 と本の一個所を開いて、彼は読みはじめたが、その内容は、白い地に置かれた黒そのもののように、対象をくっきりと泛《うか》び上がらせた。

 When the blood−stain'd murderer comes to the murder'd nigh, the wounds break out a−bleeding.
【血に汚れし殺人者、惨屍《むくろ》のかたわらに来たるときは、創《きず》破れて血を流すと云う】

 殺人者を指摘する屍体の流血――それを法水が読み終ると、一同の眼は期せずして犬射の顔に注がれた。
 なぜなら、八住の死後十時間後に起った流血は、彼が、その傍らに立っているさなかに始まったからである。
 しかし、犬射の驚きの色はやがて怒りに変って、
「遺憾ですが――法水さん、それは僕の洒落《しゃれ》じゃありませんよ」
 とどこか皮肉な調子ながら、悲しげに云い返した。
「いや、それどころじゃない、怖ろしい空想です。そんなことから、この事件はいっそう面倒なものになりましょう」
「僕は、そうとはけっして思いませんがね」
 法水は、力
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