ろの|隠れ衣《タルンカッペ》を用い、王に化けて、女王の驕慢を打ち破ったのであった。そして、王は女王と、ジーグフリードはクリームヒルトと結婚することができた。
しかしブルンヒルデは、うち負かされたグンテルに、愛を感じなかったのみならず、ジーグフリードを慕い、やがてその身代りなのを知ると同時に、変じて憎悪となった。また一方、ジーグフリードの名声を妬むものに、ハーゲンがあって、その二人は、いつか知らず知らぬ間のうち接近してしまった。ある日、二人の睦まじさに耐えかねた女王が、こっそりと、ハーゲンの耳におそろしい偽りを囁いた。
「ハーゲンよ、かつて妾《わらわ》は、ジーグフリードのために、いうべからざる汚辱をこうむりました。王は、それを秘し隠してはいますが、そなたは、妾《わらわ》にうち明けてくれましょうな。アイゼンシュタインの城内で、妾をうち負かしたグンテルが、何者であったか。また、その後も王に仮身して、しばしば妾の寝所を訪れたのは、誰か。ほほほほハーゲン、そちは、顔色を変えてなんとしやる。そうであろう。ジーグフリード……。妾は、とうからそれを知っておりましたぞ」
ハーゲンは、それを聴いて、ま
前へ
次へ
全147ページ中62ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング