フは、防堤から海の中に投げ入れていたのですが、そのとき心覚えに印したものが、貴女も知る、火術符号めいた形だったのです。ところが、悲しい事に、盲人が描く直線は、腕の廻転を軸に徐々とまがってゆくのですから、かえって八住は、毎日防堤との距離が遠くなるのを考えて、そこがあるいは、岬の角ではないかという、錯誤を起してしまったのです。
さあ夫人《おくさん》、『|鷹の城《ハビヒツブルグ》』を潜航させて、防堤下の海底に行きましょう。
先刻《さっき》はそれを見て、朝枝が天上の愛に打たれたのですが、そこにはアマリリスが一面に咲き乱れていて、あの重たげな花瓣が、下波にこう囁いているのですよ――父の愛」
底本:「潜航艇「鷹の城」」現代教養文庫、社会思想社
1977(昭和52)年12月15日初版第1刷発行
底本の親本:「地中海」ラヂオ科学社
1938(昭和13)年9月
初出:「新青年」博文館
1935(昭和10)年4〜5月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※底本で使用されている「〔〕」はアクセント分解を表す括弧と重複し
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