云って、包にはあるアルカロイドの名が書いてありますが、内容《なかみ》は僕のポケットに偶然入っていた催眠剤なんですよ。つまり、この事件の成因に僕独自の解釈を施した結論でして、犯人に対する刑の執行が、刑務所より精神病院の方がふさわしいと考えたからです。真相が僕一人だけの秘密だとすれば、当然僕に裁く権利があるはずですからね。」
 その数時間後、二人の同乗した寝台車《アンビュランスカー》が、折から茜《あかね》色の雪解跡をついてB癲狂《てんきょう》院の門を潜った。



底本:「新青年傑作選(1)推理小説編」立風書房
   1974(昭和49)年12月30日新装第1刷発行
入力:南野輝
校正:ちはる
2001年7月16日公開
2003年6月1日修正
青空文庫作成ファイル:
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