狂ったのではないかと思われるような言葉を吐きながら、次図を描いて説明を始めた。
[#仮説決闘の図(fig1317_03.png)入る]
「では、最初反太陽説の方から云うと、アインシュタインは、太陽から出た光線が球形宇宙の縁《へり》を廻って、再び旧《もと》の点に帰って来ると云うのです。そして、そのために、最初宇宙の極限に達した時、そこで第一の像を作り、それから、数百万年の旅を続けて球の外圏を廻ってから、今度は背後に当る対向点まで来ると、そこで第二の像を作ると云うのです。しかしその時には、すでに太陽は死滅していて一個の暗黒星にすぎないでしょう。つまり、その映像と対称する実体が、天体としての生存の世界にはないのです。どうでしょう久我さん、実体は死滅しているにもかかわらず過去の映像が現われる[#「実体は死滅しているにもかかわらず過去の映像が現われる」に傍点]――その因果関係が、ちょうどこの場合算哲博士と六人の死者との関係に相似してやしませんか。なるほど、一方は|Å《オングストローム》([#ここから割り注]一耗の一千万分の一[#ここで割り注終わり])であり、片方は百万兆哩《トリリオン・マイル》で
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