\―どんなに考えてもとうてい窺知《きち》[#「窺知」は底本では「窮知」]し得べくもなかった、伸子の殺人動機に触れた。それは無言の現実だった。ロダンの「接吻《キッス》」の胴体から取り出したものを、法水が衣袋《ポケット》から抜き出した時、思わず二人の眼がその一点に釘付けされてしまった――乾板。そして、幾つかの破片をつなぎ合わせて見ると、それには次の全文が現われたのである。

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一、ダ□□ベ□□□□□砒石の□□□□。
一、川那部□□□□、胸腺死の危□□□□。
(特異体質の箇条は、その二つにのみ尽きていて、それ以前のものは不明だった)
一、余は、吾児□犠牲とするに忍□□□□を以て、生れた女児を男児に換えて、生長後余が秘書として手許□□□□□紙谷伸子なり。それ故、旗太郎は□□□□血系には全然触れざるものなり。
[#ここで字下げ終わり]

 こうして、紛糾混乱を重ねた黒死館殺人事件は、ついに最終の幕切れにおいて、紙谷伸子を算哲の遺子として露わすに至った。そうなると、勿論算哲の悶死《もんし》は、伸子の|親殺し《ファテールテーツング》であり、|父よ吾も人の子なり《パテル・ホモ・ス
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