スるものでも、たしか新しい魅力には違いない。だがしかしだ。君の説明は、故意に具体的な叙述を避けているように思われる。いったい犯人は誰なんだ?」と検事は、指を神経的に絡《から》ませて、グビッと唾《つば》を嚥《の》み込んだ。
「たしか、あの時伸子は、ダンネベルグ夫人と同じ檸檬水《レモナーデ》を嚥《の》んだはずだったがね。しかし、あの女は既《とう》に、ファウスト博士の手で、旧《もと》の元素に還されてしまってるんだ」
 その間法水は、生気のない鈍重な、生命の脱殻《ぬけがら》のようになって突っ立っていて、むしろその様子は、烈しい苦痛の極点において、勝利を得た人のごとくであった。既《とう》に整頓の楔《けい》点が近づいたせいか、その急激に訪れた疲労は、恐らく何物にもまして、魅惑的なものだったに違いないであろう。しかし、そのうち烈しい意志の力が迸《ほとばし》り出てきて、
「うん、その紙谷伸子《かみたにのぶこ》だが」とガクリと顎骨《あごぼね》が鳴り、瞬間新しい気力が生気を吹き込んできた。「それがとりもなおさず、クニットリンゲンの魔法使さ」
 実に黒死館の幽鬼ファウスト博士こそ、紙谷伸子だったのだ。しかし
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