ェ、扉《ドア》口から三尺ほど前方の所を足にして、斜右《はすみぎ》に仰向けとなって横たわり、しかもレヴェズやクリヴォフ夫人と同じよう、悲痛な表情をしていて、それにはいささかも恐怖の影はなかった。屍体には、右の顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》にひどい弾丸《たま》の跡が口を開いていて、敷物《カーペット》の上に、流れ出た血がベットリこびり付いているが、外出着を着て手袋までもつけたところを見ると、あるいは法水の許を訪れようとして、突然狙撃されたのではないかと思われた。なお、兇行に使用された拳銃は、扉《ドア》の外側――把手《ノッブ》の下に捨てられていて、その扉には、外から起倒|閂《かんぬき》が掛っていた。けれども、この局面には一つの薄気味悪い証言が伴っていて、それから陰々と蠢《うごめ》くような、ファウスト博士の衣摺《きぬず》れを聴く思いがするのだった。
 ――ちょうど二時頃銃声が轟《とどろ》いたので、館中がすくむような恐怖に鎖されてしまって、誰一人現場に馳《は》せつけようとするものはなかった。すると、それから十分ほど経つと、隣室で慄《ふる》えていたセレナ夫人の耳に、扉《ドア》
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