纃b斐《かいがい》しい手が――その乾杏《ほしあんず》のように、健康そうな艶やかさが、いとも可愛らしげに照り映えているのである。しかし、セレナ夫人を見ると、相変らず恋の楯にでも見るような、いかにも紋章的な貴婦人だった。けれども、その箍骨《たがぼね》張りの腰衣《スカート》に美斑《いれぼくろ》とでも云いたい古典的な美しさの蔭には、やはり、脈搏の遅い饒舌《じょうぜつ》を忌《い》み嫌うような、静寂主義者《キエティスト》らしい静けさがあった。が、一座の空気は、明らかに一抹《いちまつ》の危機をはらんでいた。それはあながち、津多子を除外した法水の真意が、奈辺《なへん》にあるや疑うばかりでなく、それぞれに危懼《きぐ》と劃策《かくさく》を胸に包んでいると見えて、ちょっとの間だったけれども、妙に腹の探り合いでもしているかのような沈黙が続いた。そのうち、セレナ夫人がチラと伸子に流眄《ながしめ》をくれると、恐らく反射的に口を突いて出たものがあった。
「法水さん、証言に考慮を払うということが、だいたい捜査官の権威に関しますの。確かに先刻《さっき》の方々は、伸子さんが動いた衣摺《きぬず》れの音を聴いたのでしたわ」

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