Bそのうち検事が、嘆息ともつかぬような声を出して云った。
「ねえ法水君、この事件の、すべては、ファウストの呪文を基準にした、同意語《シノニム》の連続じゃないか。火と火、水と水、風と風……。だがしかしだ、あの乾板だけは、その取り合わせの意味がどうしても嚥《の》み込めんのだがね」
「なるほど、同意語《シノニム》※[#感嘆符疑問符、1−8−78] そうすると君は、この悲劇を思惑《おもわく》に結び付けようとするのかね」と法水はやや皮肉を交えて呟《つぶや》いたが、いきなり、いきなり鋭くその言葉を中途で截《た》ち切って、「あッ、そうだ支倉君、同意語《シノニム》――乾板。ああなんだか僕に、あの創紋の生因が判ってくるような気がしてきたよ」と不意に飛び上って叫んだが、そのまま風のように室を出て行ってしまった。しかし、間もなく幾分上気したような顔で、戻って来た彼を見ると、その手に、前日開封された遺言書が握られていた。そして、上段の左右に二つ並んでいる、紋章の一つを、創紋の写真に合わせて電燈で透かし見ると、そのとたんに、思わず二人の口から呻《うめ》きの声が洩れた。実に、その二つが、寸分の狂いもなく符合したか
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