熕lの子なり《パテル・ホモ・スム》――。それに、歯の間に突っ込まれている、小鳥の骸骨らしいのは、たぶん早期埋葬防止装置を[#「早期埋葬防止装置を」は底本では「早期埋装防止装置を」]妨げたという、山雀《やまがら》の死体に違いないのだ。ねえ怖ろしいことじゃないか。つまり、いったん算哲は棺中で蘇生したのだが、その時犯人は山雀の雛《ひな》を挾んで電鈴《ベル》の鳴るのを妨げたのだよ」
法水の声のみが陰々と反響《こだま》しても、それがてんで耳に入らなかったほど、検事と熊城は、目前の戦慄《せんりつ》すべき情景に惹《ひ》きつけられてしまった。その姿体は、明白に棺中の苦悶であり、その結論は生体の埋葬に相違なかった。しかし、そうは云うものの、またファウスト博士にとれば、算哲が棺中で蘇生してから狂ったように合図の紐を引き、しかも救けは来ず、力もようやく尽きようとして、頭上の蓋を掻き毟《むし》っている有様と云うのが、恐らくまた、残虐な快感をもたらせたものだったかも知れないのである。そうして、犯人の冷酷な意志は、山雀《やまがら》の屍骸と|父よ、吾も人の子なり《パテル・ホモ・スム》――の一文にとどめられるのであ
前へ
次へ
全700ページ中634ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング