オ判断して頂けるのでしたら、きっとあの賤民《チゴイネル》に、クラカウ([#ここから割り注]伝説におけるファウスト博士が、魔術修行の土地[#ここで割り注終わり])の想い出が輝くに相違ございませんわ」
そうして、一同が出て行ってしまうと、熊城は難色を現わして、法水に毒づいた。
「いやどうも呆れたことだ、むしろ与えられたものを素直に取る方が、君に適わしい高尚な精神だと思うんだがね。それより法水君、今の証言で、君が先刻《さっき》云った武具室の方程式を憶い出してもらいたいんだ。あの時君は、[#ここから横組み]2−1=クリヴォフ[#ここで横組み終わり]だと云ったね。しかし、その解答のクリヴォフが殺されたとしたら……」
「冗談じゃない。あんな|賤民の娘《チゴイネル・ユングフラウ》が、どうして、この宮廷陰謀の立役者なもんか」と法水は力を罩《こ》めて云い返した。
「なるほど、伸子という女はすこぶる奇妙な存在で、ダンネベルグ事件と鐘鳴器《カリリヨン》室を除いた以外は、完全に情況証拠の網の中にあるのだ。しかし、あの標本的な人身御供《ひとみごくう》があるがために、ファウスト博士は陽気な御機嫌を続けていられる
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