チけつ》したのだ。けれども、レヴェズは君の詭弁に追い詰められて、自分の無辜《むこ》を証明しようとした結果、護衛を断ったんだぜ」
 それには、法水も真向から反駁《はんばく》することは出来なかった。敗北、落胆、失意――希望のすべてが彼から離れてしまったばかりでなく、さながら永世の重荷となるような暗影が、一つ心の一隅に止まってしまった。たぶんその幽霊は、法水に絶えずこう囁《ささや》くことだろう、――お前がファウスト博士をして、レヴェズを殺させたのだ――と。しかし、レヴェズの気管を強圧した二つの拇指痕《ぼしこん》は、この場合、熊城に雀躍《こおど》りさせたほどの獲物だった。それでさっそく、家族全部の指痕を蒐集することになったが、その時、一人の召使《バトラー》を伴った私服が入って来た。その召使《バトラー》というのは、以前易介事件の際にも、証言をしたことのある古賀庄十郎という男で、今度も休憩中に、レヴェズの不可解な挙動を目撃したと云うのだった。
「君が最後にレヴェズを見たと云うのは、何時頃だね」とさっそくに法水が切り出すと、
「はい、たしか八時十分頃だったろうと思いますが」と最初は屍体を見まいとする
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