ネんだ。ああ、憐れむべき萎縮じゃないか。どうして、この男の想像力が、あのサルヴィニ([#ここから割り注]表情演技の誇大な伊太利俳優の典型[#ここで割り注終わり])張りの大芝居だけで、尽きてしまったとは信じられんよ。時の選択を誤らないためにか、それとも、誇らしげに死ぬためか……。いやいや、けっしてそのどっちでもないはずだ」
「あるいは、そうかもしれんがね」と法水は莨《たばこ》で函《ケース》の蓋を叩きながら、妙に含むところのあるような、それでいて、検事の説を真底から肯定するようにも思われる――異様な頷《うなず》き方をしたが、「そうすると、さしずめ君には、ピデリットの『|擬容と相貌学《ミミク・ウント・フィジオグノミーク》』でも読んでもらうことだね。この悲痛な表情は|落ちる《フォール》と云って、とうてい自殺者以外には求められないものなんだよ」そう云ってから垂幕を強く引くと、頭上に鉄棒の唸《うな》りが起った。「ねえ支倉君、ああして聴えてくる響が、この結節を曲者《くせもの》に見せたのだったよ。何故なら、レヴェズの重量が突然加わったので、鉄棒に弾みがついてしないはじめたのだ。すると、その反動で、懸吊
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