ノ[#「現在弓を右に」に傍点]、提琴を左に持っていたじゃないか[#「提琴を左に持っていたじゃないか」に傍点]。つまり、それがデシル法の、左から右へ――の本体なんだよ。しかし支倉《はぜくら》君、まさかにその恒数《コンスタント》が、偶然の事故じゃあるまいね」
その時、クリヴォフ夫人の屍体が運び出され、それと入れ代って、一人の私服が入って来た。勿論全館にわたる捜査が終ったのであったが、そのもたらせられた報告には、思わず驚きの眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》るものがあった。と云うのは、殯室《モーチュアリー・ルーム》の鍵は勿論のことで、それにあろうことかレヴェズの姿が、曲目の第一を終って休憩に入ると、同時に消えてしまったというのだった。なおそれに伴って、ちょうど惨事が発生した時刻には、真斎は病臥中、鎮子は図書室の中で、著作の稿を続けていたということも判った。しかし、それを聴くと、法水の顔にはただならぬ暗影が漂いはじめた。彼はもはや凝然《じっ》としていられなくなったように、焦《もど》かしげな足取りで室内を歩きはじめたが、突然立ち止って、数秒間突っ立ったままで考えはじめた。そ
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