フですわ。最初|地精《コボルト》の札を、私の机の中に入れて置いたばかりではございません。今日も、あの悪魔はまた私を択んで、人身御供《ひとみごくう》の三人の中に加えるんですもの」と背後に廻した両手で、竪琴《ハープ》の枠を固く握りしめ、それを激しく揺《ゆす》ぶった。「ねえ、法水さん、貴方は、クリヴォフ様が演奏壇のどこで刺されたか、また、どっちの側から転げ落ちたか――お知りになりたいのでしょう。けれども、ほんとうに私、何も知らないのです。ただ竪琴《ハープ》の枠を掴んで、凝然《じっ》と息を詰めていたのでございますから、ねえ旗太郎様、セレナ様、貴方がたは、たぶんそれを御存じでいらっしゃいましょう」
「いいえ、私がもしグイディオン([#ここから割り注]ドルイド呪教に現われた、暗視隠形に通じていたと云われる、大神秘僧[#ここで割り注終わり])でしたら、あるいは知っていたかもしれませんわ」とセレナ夫人は、戦《おのの》きの中に微かな皮肉を泛《うか》べた。すると、それに言葉を添えて、旗太郎が法水に云った。
「事実そうなんです。生憎《あいにく》僕等には、昆虫や盲者《めくら》が持ち合わせているほど、空間に対す
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