ト華やかに見せていたのである。
 法水は仔細に兇器の柄を調査したが、それには指紋の跡はなかった。そして、柄の根元にはモントフェラット家の紋章が鋳刻されていて、引き抜くとはたしてそれが、二叉《ふたまた》に先が分れている火焔形の槍尖《ランス・ヘッド》だった。しかし、兇行の際に現われた自然の悪戯《いたずら》は、最も肝腎《かんじん》な部分を覆うてしまった。と云うのは壇上からその位置までの間に、いっこう血滴が発見されないことだった。云うまでもなく、その原因と云うのは、刃がすぐ引き抜かれなかったという点にあって、勿論それがために、瞬間の迸血《ほうけつ》が乏しかったからである。しかし、それによって、なにより犯行を再現するに欠いてはならない、連鎖が絶たれてしまった。つまり、クリヴォフ夫人が壇上のどの点で刺され、そうしてまた、どういう経路を経て墜落した――かという二つの絡《つなが》りを、もはや知り得べくもないのだった。法水は検屍を終えると、聴衆を室外に出してしまってから、階段を上って行った。すると、伸子がまず、夢に魘《うな》されたような声で叫び立てた。
「あのファウスト博士は、まだまだ私を苦しめ足りない
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