t」――の全文が刻まれていた。しかし、床上には足跡がなく、恐らく算哲の葬儀の際にも、古式の殯室儀《ひんしつぎ》は行われなかったものらしい。そうして、前室より先には誰一人入らなかったことが判ると、疑題のすべてはそこに尽きてしまった。つまり、水を洗手台から導いて、階段を落下させたという目的は、きわめて推察に容易ではあるが、次の煖炉《ストーブ》の点火という点になると、その意図には皆目見当がつかないのだった。勿論、壁の開閉器函《スイッチばこ》は蓋《ふた》が明け放されていて、接触刃《ナイフ》の柄がグタリと下を向いていた。検事は、その柄を握って電流を通じたが、足元に開いている排水孔を見やりながら、知見を述べた。
「つまり、洗手台の水を使って、階段から落下させたというのは、床の埃の上に附いた足跡を消すにあったのだよ。すると、どうしても根本の疑義と云うのは、この室《へや》の本開閉器《メイン・スイッチ》を切ったのと、それから、扉《ドア》に鍵を下して室外に出てから、クリヴォフを刺した――その一人二役にあるという訳になるがね。しかし、どうあっても僕には、レヴェズがそんな、小悪魔《ポルターガイスト》の役を勤め
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