ェ現われるのだ。のみならず、それが弛《ゆる》んだ弾条《スプリング》のように不規則な弾縮をするから、そのつどに、加わってくる力が異なるという訳だろう。したがって、どの靴跡にも、一々わずかながらも差異が現われてくるのだ。すると、右足に左靴、左足に右靴を履くことになるから、歩線の往路が復路となり、復路が往路となって、すべてが逆転してしまうのだよ。その証拠と云うのは、乾板のある場所で廻転した際と、枯芝《かれしば》を跨《また》ぎ越した時と――その二つの場合に、利足《ききあし》がどっちの足か吟味してみるんだ。そうしてみたら、この差数が明確に算出されてくるじゃないか。で、そうなると支倉《はぜくら》君、どうしてもクリヴォフ夫人が、この詭計《トリック》を使わねばならなかった――という意味が明瞭《はっきり》するだろう。それは単に、あの偽装足跡を残すばかりではなかったのだ。なにより、最も弱点であるところの踵《かかと》を保護して、自分の顔を足跡から消してしまうにあったのだよ。そして、その行動の秘密と云うのが、あの乾板の破片にあった――と僕は結論したいのだ」
 熊城は莨《たばこ》を口から放して、驚いたように法水
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