。倒しになるので、把手《ハンドル》が釘で押され、箭《や》はそのまま開いたとおりの角度で発射されたのでしたよ。そして、発射の反動で、弩は床の上に落ちたのですが、収縮した弦《つる》は、蒸発しきると同時に旧《もと》どおりになったことは云うまでもありますまい。しかしレヴェズさん、元来その詭計《トリック》の目的と云うのは、必ずしも、クリヴォフ夫人の生命を奪うのにはなかったのです。ただ単に、貴方《あなた》の不在証明《アリバイ》をいっそう強固にすればいいのでしたからね」
[#火術弩の仕掛けの図(fig1317_44.png)入る]
 その間レヴェズは、タラタラと膏汗《あぶらあせ》を流し、野獣のような血走った眼をして、法水の長広舌《ちょうこうぜつ》に乗ずる隙もあらばと狙っていたが、ついにその整然たる理論に圧せられてしまった。しかし、そうした絶望が彼を駆り立てて、レヴェズは立ち上ると胸を拳《こぶし》で叩き、凄惨な形相をして、哮《たけ》りはじめた。
「法水さん。この事件の悪霊《ベーゼルガイスト》と云うのは、とりもなおさず貴方《あんた》のことだ。しかし、一言断っておくが、貴方は舌を動かす前に、まず『マリエン
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