o来ます。ですから、クリヴォフ夫人や易介《えきすけ》の事件は、動機を見当違いの遺産に向けさせようとしたり、あるいはまた、それを作虐的《ザディスティッシュ》に思わせんがためなのでした。勿論、伸子のごときは、最も陰険兇悪をきわめた、つまり、あの悪鬼特有の擾乱《じょうらん》策と云うのほかにないのですよ」と法水は始めて莨《たばこ》を取り出したが、声音に漲《みなぎ》っている悪魔的な響だけは、どうしても隠すことは出来なかった。続いて、彼は驚くべき結論を述べた。「ですから、それが、今日伸子に虹を送った心理であり、またそれ以前には、貴方とダンネベルグ夫人との秘密な恋愛関係なのでした」
 ああ、レヴェズとダンネベルグ夫人との関係――それは、よし神なりとも知る由はなかったであろう。まったくその瞬間、レヴェズは死人のように蒼《あお》ざめてしまった。咽喉《のど》が衝動的に痙攣《けいれん》したと見えて、声も容易に出ぬらしい。そして、頸筋《くびすじ》の靱帯《じんたい》を鞭繩のようにくねらせながら、まるで彫像のよう、あらぬ方を瞶《みつ》めているのだった。それが、実に長い沈黙だった。窓越しにハツラツと噴泉の迸《ほとば
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