アに何か衝動さえ与えられれば、恐らくひとたまりもないほど脆弱《もろ》いものだったに違いありません。そこで僕は、スペードの王様《キング》という言《ことば》を出したのです。何故なら、精神全体を一つの有機体だとすれば、当然そこから、物理的に生起して来るものがなければならぬからです。その非常に暗示的な一言によって、僕は何かしらの反応を期待しました。すると、はたして貴女《あなた》は、僕の言葉をハートの王様《キング》と云い直しました。まさにそのハートの王様《キング》です。僕はその時、狂乱に等しい異常な啓示をうけたのでしたよ。しかし、続いて貴女には、二度目の衝動が現われて、突然度を失い、思わず指環を小指に嵌《は》め込んでしまったのです。どうして僕が、その時の、恐怖の色を見|遁《のが》しましょうか」と鋭く中途で言葉を裁ち切りながら、法水の顔が慄然《りつぜん》たるものに包まれていった。
「いや、僕の方こそ、もっともっと重苦しい恐怖を覚えたのですよ。何故なら、骨牌《カルタ》札を見ると、その人物像はどれもこれも、上下の胴体が左削ぎの斜めに合わされていて、それぞれに肝腎な心臓の部分が、相手の美々しい袖無外套《
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