チていて、その下から全部にかけては、物凄いほど克明な刀の跡を見せた、十五世紀ヴェネチアの三十櫓楼船《ブチントーロ》が浮彫になっていた。そして、その舳《みよし》の中央には、首のない「ブランデンブルクの荒鷲」が、極風に逆らって翼を拡げているのだった。そういう、一見|史文《しぶん》模様めいた奇妙な配合《とりあわせ》が、この桃花木《マホガニー》の寝台を飾ってる構図だったのである。そして、ようやく法水が、その断頸鷲の浮彫から顔を離した時だった。静かに把手《ノッブ》の廻転する音がして、喚《よ》ばれた紙谷伸子が入って来た。
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  第六篇 算哲埋葬の夜
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    一、あの|渡り鳥《ワンダー・フォーゲル》……二つに割れた虹

 紙谷伸子《かみたにのぶこ》の登場――それが、この事件の超頂点《ウルトラ・クライマックス》だった。と同時に、妖気|※[#「示+駸のつくり」、第4水準2−82−70]気《しんき》の世界と人間の限界とを区切っている、最後の一線でもあったのだ。何故なら事件中の人物は、クリヴォフ夫人を最終にしてことごとく篩《ふる》い尽されてしまい、つい
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